ルクソール西岸の玄関口とも言えるのが、ここ「メムノンの巨像」です。
紀元前1400年頃の人物とされるアメンホテプ3世の時代から現在の地に座り続けている巨大な像になります。
今回はそんなメムノンの巨像をご紹介します!
メムノンの巨像(Colossi of Memnon)について
「メムノンの巨像(Colossi of Memnon)」は、かつて「テーベ」と呼ばれた古代エジプト新王国時代の宗教の中心地「ルクソール」のナイル川西岸に居座る石像になります。
現在は巨大な二体の像が残るのみとなっていますが、ここにはもともと「アメンホテプ3世」の葬祭殿が建っており、メムノンの巨像は葬祭殿の入り口部分だったと考えられています。
メムノンの巨像の名前の由来は、ギリシア神話のトロイア戦争に登場するエチオピア王メムノーンから。
これは、紀元前30年頃に起きた地震によってヒビが入った像が、夜明けに朝露や蒸気の影響で音を発するようになり、それがアキレウスに殺されて石像と化したメムノーンのうめき声に聞こえたことからだそう。
この噂を聞きつけ当時は多くの人が押し寄せたそうで、その中にはローマ帝国の安定化に尽力したハドリアヌス帝もいたほどだったみたいですが、その後ローマ帝国によって修復され、音は発しなくなりました。
メムノンの巨像を建てたファラオ「アメンホテプ3世」とは??
ここで、メムノンの巨像と最も関係が深いファラオ「アメンホテプ3世」についてもご紹介しておきましょう。
アメンホテプ3世は古代エジプト新王国時代のファラオであり、先代のトトメス1世やトトメス3世の積極的な軍事遠征によって国力や経済力が増大した頃に国を継いだため、王位についたときにはすでにエジプトは安定した帝国となっていました。
国が安定しているということは文化が華開くのが歴史の常、ということで、アメンホテプ3世は建築活動に注力し、歴代のファラオの中で最も多くの建造物を建てたとされています。
すでに建築されていた東岸のカルナック神殿とルクソール神殿を改築し、西岸には自身の葬祭殿を建築しました。
この葬祭殿の入り口こそ「メムノンの巨像」であり、別記事でご紹介している「ハトシェプスト女王葬祭殿(デル・エル・バハリ)」を凌ぐほどの巨大な葬祭殿だったと考えられています。
加えて、葬祭殿の南側に「マルカタ王宮」という巨大な王宮と「ビルケト・ハブ」という人造湖を造成し、王位の更新を示すセド祭では壮大な儀式を執り行っていたと考えられています。
また、当時勢力を伸ばしていたアメン神官団を牽制する意味も含めて太陽神の一形態であるアテン神の信仰も取り入れており、これが次代のアメンホテプ4世の宗教改革に繋がることとなります。
古代エジプト一の改革を行った「アメンホテプ4世(アクエンアテン)」
「アメンホテプ4世」は世界史の教科書にも載るほどの宗教改革を実施したファラオになりますので、せっかくですから彼にも少し触れておきましょう。
アメンホテプ3世の跡を継いだアメンホテプ4世は、それまでのアメン信仰と伝統的な多神教世界と決別し、アテン神を唯一神とする宗教改革を実施します。
それまで、中心に据えられる神は変化すれど太陽神を中心とする多神教世界を貫いてきた古代エジプトの歴史からすると、極めて異質かつセンセーショナルな変化と言えるでしょう。
しかし、すでにアメン信仰が広まっている土地で新たな信仰を生み、しかも定着させるのは困難だったことから、アメンホテプ4世は新しい都として「アケトアテン(テル・エル・アマルナ)」の建設を開始し、自身の名を「アテン神に有益な者」を意味する「アクエンアテン(イクナートン)」に改名しました。
新都アケトアテンは、画期的な規格石材が用いられたことでわずか5年という歳月で完成したとされていますが、近年の調査から、一般市民ないしは奴隷による過酷な労働が新都建設の裏にあったとされています。
この宗教改革と革新的な新都建設が、アメンホテプ4世(アクエンアテン)の偉業とされていますが、これらに付随する形で実はもう一つあります。
それが、「アマルナ美術」と呼ばれる表現方法が華開いたことです。
その特徴は、描かれる人物の身体的特徴が写実的、ないしは誇張されて描かれていることにあり、今までの古代エジプトの表現方法に比べて生き生きと豊かな表現に、口語的に表すと”よりリアリティを追求した”表現になっており、その後のエジプト美術に影響を与えたとされています。
「アマルナ美術」は、世界史の教科書を開けばきっと載っているはずのワードですからね!
ちなみに、アメンホテプ4世(アクエンアテン)の改革の顛末もご紹介しておくと、、
アテン信仰はアクエンアテン自身が唯一の信仰対象かつ唯一の祭祀者であったため、彼の死後は再び都はテーベに戻され、アメン信仰および伝統的な多神教世界が復活しています。
つまり、アクエンアテンの改革は彼一代きりのものとなってしまったわけなのです。
しかし僕は、アクエンアテンの改革精神、今までなかったこと、ありえなかったことに取り組む姿勢は、現代の世界に生きる僕たちだからこそ学びたいものが多くあるように感じました。
歴史上の人物から学びを得る、これもまた世界史の醍醐味ですね!!
ちなみにのちなみに、、
アクエンアテンことアメンホテプ4世の息子こそが、「黄金のマスク」で一躍有名となった「ツタンカーメン」なのですよ!!
ツタンカーメンについては、こちらも別記事の「ルクソールのまとめ」の「王家の谷」の紹介を参考にしてみてくださいね!
👇ルクソールのまとめ記事はこちら!!
Coming soon!!
👇ハトシェプスト女王葬祭殿(デル・エル・バハリ)についてはこちら!!
写真でメムノンの巨像!!
まずはナイル川東岸から西岸に渡る!
メムノンの巨像へは、カイロからの寝台列車で朝、ルクソールに到着し、ホテルで一息ついて向かいました。
ルクソールの玄関口となる列車駅や空港は、どちらもナイル川の東岸に位置し、住民の生活の中心地も東岸となっています。
ですので、ほとんどの人、というか十中八九泊まるホテルは東岸になるはずです。
そして、ルクソールの見どころは東岸と西岸のどちらにもあり、当然、西岸も巡ってこそのルクソール観光と言えますので、ナイル川をまたいで西岸へ渡る必要があります。
ナイル川を渡る手段は、もちろん船!
最も無難なのは「ローカルフェリーに乗る」方法になります。
昼間なら20分おきにナイル川の両岸を繋ぐ”足”になっています。
しかし、ローカルフェリーの船着場に行き着くまでが至難なのがエジプト。
なぜって、、”客引きの嵐”を乗り越えなければならないのだから…!
もっとも、ここで”良い引き”をすることもあるというのは一つ頭の片隅にいれておきたいポイント。
実際僕は、東岸で遭った客引きのガイドと交渉し、
「ナイル川の往復代」+「僕が行きたいところをすべて車でまわる」
という条件を、「$20+バクシーシ少々」で済ませることができました。
これは、前日のカイロでカモられた経験から得た教訓、「とにかく強気で交渉する」、「多少自信がなくても『俺が絶対だろ』ぐらいの勢いをもつ」という心意気で望んだ結果です。笑
これが高いのか安いのかは正直わかりませんが、ルクソールやカイロのお土産屋での買い物、カイロやアスワンでのタクシーチャーター代などから考えても妥当な交渉だったと思っています。
少なくとも、現地の物価はどうあれ「ルクソールの西岸の行きたいところを自由にまわれて2000円ちょっと」というのは安い買い物だったと僕は考えています。
そう、結局自分が満足できればいいのさ!!
これはエジプトのみならず、他の国でもそうですが…!
西岸へ渡りきると、用意されていたタクシーに乗り込み、いざルクソール西岸散策へ!
僕は、まわりたい場所の入場券を最初にまとめて買いました。
エジプトのほとんどの観光地は学割がきくので、学生の方は必ず申し出ましょう!!
学生証に英語が書かれていればご自身の大学の学生証を、そうでない方や自分の大学の学生証では不安だという方は国際学生証を発行していくと確実です。
ちなみに、エジプトのみならず観光地で学割がきく国は、お土産屋さん(交渉できそうな店主さんのお店のみですが)での値段交渉でも、「学生(Student)」が強力な武器になりますよ!!
(僕はイギリスのお土産屋さんで”Student”を使って値切ってもらった経験があります!)
加えてもう一つ、エジプトでの”お決まり”というと、「お釣りは言わないとくれない」ということです!
エジプト版チップ「バクシーシ」だと言ってくるので、額が大きいとき、渡したくないときは毅然とした態度で”change”と言いましょうね!
“玄関口”メムノンの巨像!
そんなこんなで最初の訪問地が「メムノンの巨像」です!
メムノンの巨像は道沿いに立っている(座っている)ので、入場料はかかりません。
ということで、メムノンの巨像はこれだけ。笑
まさに「玄関口」なわけですね!
続きはこちら👇の「メディネト・ハブ(ラムセス3世葬祭殿)」の記事をご覧ください!!
メムノンの巨像 まとめ
ということで、今回は「メムノンの巨像」について、そして、メムノンの巨像に所縁のある「アメンホテプ3世」、さらにはアメンホテプ3世の次のファラオ「アメンホテプ4世(アクエンアテン)」についてもご紹介してきました。
ここで取り上げたメムノンの巨像はルクソール西岸、さらにはルクソール観光の導入的な存在でもあります。(もちろん僕のルクソール観光の記事の導入でもありますよ!笑)
まずはメムノンの巨像を見る!そして西岸を巡る!!
これがルクソール西岸の観光の黄金ルートと言えるでしょう!
皆さんも、「ルクソールに来たらまずはメムノンの巨像!」ぐらいの気持ちでいきましょうね!!
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